彼らが登場した途端、その手が止まった。
飲食が禁止されているドラリオンの客席。
優美なショーの最中、私の隣では、若い母親が我が子に演目の内容を逐一解説しながら、ひっきりなしに袋菓子を食べている。
大音量の音楽をかき分けるその大声。ステージから子どもへとせわしなく振り向けられる頭、忙しく口に運ばれる手。
それらに耳と目の集中を奪われ続け、どうにも落ち着いてショーを味わえない。
だが思い返せばこの私も、劇場で芝居を観ては、リアルタイムで隣席の後輩に批評を聞かせるなどしていた前科者である。私の地声は大きい。周囲の観客もさぞ迷惑していただろう。
因果応報と悟って注意はしないことにした。
その1袋が空になるまで、若しくはそのお腹がくちくなるまでの辛抱と黙認することしばし。
演目がたおやかに終わると、入れ替わりにドタバタと賑やかな3人の男性が登場した。
クラウンだ。
その途端、彼女の手がぴたりと止まった。
身を乗り出して彼らを見ているのが、視界の端に映る。
幾度も無邪気な笑い声を上げ、その夢中ぶりはあれほど尽くした我が子への解説さえままならぬほどだ。
彼らは次に一体何をしでかして楽しませてくれるのか。心躍らせる彼女の期待が、同じ高揚を抱く私の胸に伝わってくる。
「めっちゃおもろいなぁ!」
屈託のない声が隣で響いた。
その演目の間、彼女が喋ること以外に口を使ったのは、僅かに数回と記憶する。
クラウンを観るために足を運んだドラリオン。
そこで目の当たりにしたのは、かくも明瞭なクラウンパワーだった。
飲食が禁止されているドラリオンの客席。
優美なショーの最中、私の隣では、若い母親が我が子に演目の内容を逐一解説しながら、ひっきりなしに袋菓子を食べている。
大音量の音楽をかき分けるその大声。ステージから子どもへとせわしなく振り向けられる頭、忙しく口に運ばれる手。
それらに耳と目の集中を奪われ続け、どうにも落ち着いてショーを味わえない。
だが思い返せばこの私も、劇場で芝居を観ては、リアルタイムで隣席の後輩に批評を聞かせるなどしていた前科者である。私の地声は大きい。周囲の観客もさぞ迷惑していただろう。
因果応報と悟って注意はしないことにした。
その1袋が空になるまで、若しくはそのお腹がくちくなるまでの辛抱と黙認することしばし。
演目がたおやかに終わると、入れ替わりにドタバタと賑やかな3人の男性が登場した。
クラウンだ。
その途端、彼女の手がぴたりと止まった。
身を乗り出して彼らを見ているのが、視界の端に映る。
幾度も無邪気な笑い声を上げ、その夢中ぶりはあれほど尽くした我が子への解説さえままならぬほどだ。
彼らは次に一体何をしでかして楽しませてくれるのか。心躍らせる彼女の期待が、同じ高揚を抱く私の胸に伝わってくる。
「めっちゃおもろいなぁ!」
屈託のない声が隣で響いた。
その演目の間、彼女が喋ること以外に口を使ったのは、僅かに数回と記憶する。
クラウンを観るために足を運んだドラリオン。
そこで目の当たりにしたのは、かくも明瞭なクラウンパワーだった。
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