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2007.12.30

シルク・ドゥ・ソレイユ〜「ドラリオン」のクラウン vol.2

そのほかのクラウン

ラリオンのクラウンをもれなく堪能するなら、開演10分前には席についておきたい。彼らはまだ観客の入りきらぬうちから客席へやってくる。実はそこからもうショーは始まっているのだ。
 
ラウンは「場をあたためる」「空気を変える」のことばどおり、彼らが現れると周囲は春のような陽気を帯びていった。遠目からも観客が相好を崩しているのが見て取れる。

場するクラウンは3人。そのうち最も印象的だった一人、ジオバンネ*役のフィリップ・エマールさんは、ホスピタルクラウンを何年もなさっていた経歴の持ち主だそうである。小柄で茶目っ気たっぷりにちょこまかと動く、実にキュートなおじさまだ。巧みに観客の呼吸を盗んでは、心地良い笑いを幾度となく誘う。

の村八分席からでは、動作を確認するのが精一杯だったのだが、どうやらドラリオン中のクラウンの演目は単なる箸安めではなく、メインテーマに沿ったメッセージが暗喩的に表現されていたらしい。そのためか、優美でアクロバティックな演目とは対極にありながら、ギャップに興ざめさせられることは一瞬たりともなかった。赤味の強い照明も一役買っていたかもしれない。

S席とA席の観客の温度差が甚だしい。大層熱を帯びたステージ間際の席に対し、後方A席は静まり返っていると言う場面も少なくなかった。ドラリオンの客席はすり鉢状になっている。例えるなら、A席は舞台袖後方の高みから眺めるようなもの。多くは演者の横顔か背中ばかりを見る羽目になる。お客いじり特有の繊細な間合いや表情などというものも、おおよそにしか伝わらない。蚊帳の外の気分。可能ならできるだけステージに近い席を。せめてオペラグラスを。

ラリオンのクラウンを遺憾なく堪能するなら、ネットを徘徊して情報を収集したりせぬよう肝に銘じておきたい。そこに仕掛けられた演出を暴露している記事などうっかり読んでしまった日には、地団駄踏む事必至、頭の中に消しゴムが欲しくなること請け合いである。訳知らぬ隣人の楽しげなリアクションにもジェラシーを禁じえなくなる。私と同じ轍を踏まぬようどうぞご注意を!


* ジオバンネ・・・日本公演記念DVDではこう表記されている。
 でも、「ジョバンニ」が一般的。

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