「CLOWN!CLOWN!CLOWN!2007」というショーを観ていた。
幼いときの自分も、ここまで透明で真っ直ぐだったのだろうか。
私は驚きの眼差しで、自分の内なる変化を捉えていた。
クラウンに会うと童心に返るとよく人は言う。
けれど、子どもはその幼さ故に自分の童心が見えない。
その時の私は、クラウンに呼び覚まされた己がイノセントを、さやかに見つめている大人だった。
ショーがフィナーレを迎えた。
笑顔と輝きに満ちた時間が終わろうとしている。
舞台にずらりと並んだ21名のクラウンたちが、観客に向かって一斉に手を振る。
彼らの温かな波動が客席に溢れ出してきた。
私も手を振ってそれに応えたい……! 衝動が突き上げる。
だがそれは、ひどく恥ずかしい行為のように思えた。少なくとも大人のすることではない。
振りたいその手を拍手に代えて、ぐっと堪え続けた。
小学4年生の時だ。学校にミュージカルがやってきた。
住んでいたのは映画館さえまともにない田舎、生の舞台を観ることなど夢のまた夢の頃である。
年に1度学校へ巡業してくる劇団の人たちは、私にとってサンタクロースのような存在だった。
わけてもその年の贈り物は、歌と演劇が殊更好きだった私を熱狂させた。
弾けるような明るい芝居が終わると、演じ終えた出演者たちが、舞台の上から「ばいば〜い!」と力いっぱい私たちに手を振る。いつまでもいつまでも振ってくれる。
そのとき私は、文字通り夢の中にいたらしい。
そのことにまったく気付いていなかった。
隣にいた男子の言葉が現実に引きずり出すまで――
「ばっかじゃねーの!?*」
我に返ると、私は舞台の彼らに向かって、これ以上ないというほど手を振り返していた。
その私に放った一矢。
一瞬にして私は覚め、そして冷めた。
以来、それは私にとって知らぬうちに禁忌となっていたようだ。
私に手を振らせなかったのがその記憶であることに思い至ったのは、ショーから数日も過ぎた頃である。
翌日も観に行った同公演のフィナーレで、まだそのことに気付いていなかった私は、今日こそはもう抑えきれない思いを胸いっぱいに抱え悶えていた。
どうしても手を振りたい! 振り返したい! 私もあなたたちを愛している……!!
目の前でひときわ大きく手を振っている大人が視界に入った。
あのバルーンおじさんだ!
どうみても私より年上である。あの年齢でよしとされるなら、私はもっと許される筈。振らねばきっと後悔する。隣席の怖ろしく低温の客がたとえ嘲笑しようとも、私は手を振る、何と思われても今振るっ!!
クラウンに会った瞬間から感じた“解放”。
手を振った瞬間、観音開きの巨大な扉が眼前で開け、煌々と世界が広がる様を観た。
あれほどまでに縛りのない自由というものを体感したことはない。
それはフィナーレにふさわしい、解放のクライマックスだった。
* 標準語に訳していますので、ニュアンスが若干異なります。
幼いときの自分も、ここまで透明で真っ直ぐだったのだろうか。
私は驚きの眼差しで、自分の内なる変化を捉えていた。
クラウンに会うと童心に返るとよく人は言う。
けれど、子どもはその幼さ故に自分の童心が見えない。
その時の私は、クラウンに呼び覚まされた己がイノセントを、さやかに見つめている大人だった。
ショーがフィナーレを迎えた。
笑顔と輝きに満ちた時間が終わろうとしている。
舞台にずらりと並んだ21名のクラウンたちが、観客に向かって一斉に手を振る。
彼らの温かな波動が客席に溢れ出してきた。
私も手を振ってそれに応えたい……! 衝動が突き上げる。
だがそれは、ひどく恥ずかしい行為のように思えた。少なくとも大人のすることではない。
振りたいその手を拍手に代えて、ぐっと堪え続けた。
小学4年生の時だ。学校にミュージカルがやってきた。
住んでいたのは映画館さえまともにない田舎、生の舞台を観ることなど夢のまた夢の頃である。
年に1度学校へ巡業してくる劇団の人たちは、私にとってサンタクロースのような存在だった。
わけてもその年の贈り物は、歌と演劇が殊更好きだった私を熱狂させた。
弾けるような明るい芝居が終わると、演じ終えた出演者たちが、舞台の上から「ばいば〜い!」と力いっぱい私たちに手を振る。いつまでもいつまでも振ってくれる。
そのとき私は、文字通り夢の中にいたらしい。
そのことにまったく気付いていなかった。
隣にいた男子の言葉が現実に引きずり出すまで――
「ばっかじゃねーの!?*」
我に返ると、私は舞台の彼らに向かって、これ以上ないというほど手を振り返していた。
その私に放った一矢。
一瞬にして私は覚め、そして冷めた。
以来、それは私にとって知らぬうちに禁忌となっていたようだ。
私に手を振らせなかったのがその記憶であることに思い至ったのは、ショーから数日も過ぎた頃である。
翌日も観に行った同公演のフィナーレで、まだそのことに気付いていなかった私は、今日こそはもう抑えきれない思いを胸いっぱいに抱え悶えていた。
どうしても手を振りたい! 振り返したい! 私もあなたたちを愛している……!!
目の前でひときわ大きく手を振っている大人が視界に入った。
あのバルーンおじさんだ!
どうみても私より年上である。あの年齢でよしとされるなら、私はもっと許される筈。振らねばきっと後悔する。隣席の怖ろしく低温の客がたとえ嘲笑しようとも、私は手を振る、何と思われても今振るっ!!
クラウンに会った瞬間から感じた“解放”。
手を振った瞬間、観音開きの巨大な扉が眼前で開け、煌々と世界が広がる様を観た。
あれほどまでに縛りのない自由というものを体感したことはない。
それはフィナーレにふさわしい、解放のクライマックスだった。
* 標準語に訳していますので、ニュアンスが若干異なります。
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